症例報告
有茎大網被覆を用いて1期的に縫合閉鎖しえた高齢者発症特発性食道破裂の1例
早馬 聡1)2), 森田 高行1), 藤田 美芳1), 仙丸 直人1), 宮坂 祐司1), 加藤 紘之2)
北海道消化器科病院外科1), 北海道大学医学部腫瘍外科2)
高齢者に発症した特発性食道破裂はまれであるが,有茎大網被覆を用いて1期的縫合閉鎖しえた症例を経験したので報告する.症例は75歳の男性.飲酒後に嘔吐,その後胸痛,呼吸困難,上腹部痛をきたし,循環器科を受診したが心電図・心エコー上異常を認めず,急性腹症疑いで当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて胸部下部食道左側壁に穿孔部を確認,特発性食道破裂の診断で発症21時間後に手術を開始した.術式は破裂部縫合閉鎖とし,これに左胃大網動脈を茎とする大網弁被覆術を加えた.術後のガストロ造影では縫合不全や縫合部の狭窄を認めず,その後も順調に回復し,第23病日で退院となった.特発性食道破裂において縫合閉鎖をおこなう場合,縫合不全の危険性が高率につきまとうが,大網被覆は縫合部の補強として大変有用な方法と考えられた.
索引用語
spontaneous esophageal rupture, pedicled omental covering procedure, old age
別刷請求先
早馬 聡 〒060-8638 札幌市北区北14条西5丁目 北海道大学医学部腫瘍外科教室
受理年月日
2001年11月27日
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