症例報告
プロテインS欠乏症に起因した腸間膜静脈血栓症の1手術例
池田 公正, 島野 高志, 北田 昌之, 塚原 康生, 柴田 高, 福島 幸男, 秦 信輔, 赤木 謙三, 奥山 正樹, 高橋 裕二
市立豊中病院外科
下腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので報告する.症例は44歳の男性.両下肢深部静脈血栓症を発症した後,腹痛・下血・発熱を主訴に入院した.左下腹部に限局性腹膜刺激症状を伴う拡張した腸管を触知した.緊急大腸内視鏡により虚血性腸疾患と診断し,緊急手術を施行した.下腸間膜静脈は根部から末梢に至るまで広範な血栓を認め,下行結腸~直腸S状部はうっ血を呈し,S状結腸はうっ血壊死に陥っていた.横行結腸~直腸S状部を切除し,横行結腸人工肛門を造設した.術後ヘパリンを用いた抗凝固療法を併用したにもかかわらず,術後46日目に上腸間膜静脈血栓症を生じた.IVRによる線溶・抗凝固療法により腸管壊死は回避できたが,虚血性空腸狭窄に至り,空腸部分切除を施行した.血液凝固系検査でprotein Sが低値を示し,protein S欠乏症が本症例の原因であると考えられた.
索引用語
IMV thrombosis, SMV thrombosis, protein S deficiency
別刷請求先
池田 公正 〒560-0055 豊中市柴原町4-14-1 市立豊中病院外科
受理年月日
2001年12月12日
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