症例報告
大量下血によるショックで発症した小腸クローン病の1例
安村 幹央, 飯田 辰美, 後藤 全宏, 岡田 将直, 村瀬 勝俊, 水谷 知央, 二村 直樹*, 阪本 研一*
JA岐阜厚生連総合病院養老中央病院外科, 岐阜大学第1外科*
大量下血で発症した小腸クローン病の1例を経験した.症例は16歳の男性.突然の大量下血の後意識消失し,出血性ショック状態で来院した.上部下部消化管内視鏡では異常を認めず,上腸間膜動脈造影で,回腸動脈支配領域にextravasationを認めた.入院後10単位の輸血を要し,下血が続いたため,入院から4日目に開腹術を施行した.小腸壁は全体に充血し浮腫状で腸間膜側に肥厚が目立ち,fat wrappingを認めた.腸管切開により腸間膜側に縦走潰瘍を認めたためクローン病を疑い回腸を約80cm切除し,端々吻合した.摘出標本で腸間膜側に65cmにわたり連続する縦走潰瘍と2か所の浅い潰瘍を認めた.病理組織学的には全層性の炎症所見と非乾酪性肉芽腫を認め,クローン病と診断された.クローン病で出血を初発症状とし,緊急手術を要する事は極めてまれである.自験例は術後6年7か月を経過した現在まで再発の徴候を認めていない.
索引用語
Crohn's disease, massive bleeding
別刷請求先
安村 幹央 〒500-8705 岐阜市司町40 岐阜大学第1外科
受理年月日
2001年12月12日
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