原著
大腸癌進展におけるhepatocyte growth factor(HGF)の検討―Dukes分類におけるHGFの臨床的意義―
葦沢 龍人, 青木 達哉*, 寿美 哲生, 勝又 健次, 富岡 英則, 小柳 泰久*, 山本 啓一郎**
東京医科大学八王子医療センター消化器外科, 東京医科大学外科*, 西東京中央総合病院**
目的:Hepatocyte growth factor(HGF)は癌細胞に対しmitogen,motogenとして働き浸潤,転移を高めるとされている.本研究ではHGFと大腸癌進展の関連性について検討し,Dukes分類におけるHGFの臨床的意義を明らかにする.方法:大腸癌53例を対象としHGFと1)臨床病理学的所見(リンパ管侵襲,静脈侵襲,リンパ節転移,肝転移),2)HGF関連因子(IL-6,IL-1β,TNF-α,TGF-β1),3)転移関連接着因子(ELAM-1,ICAM-1,VCAM-1)との関連性を検討した.さらにHGF,HGF関連因子をDukes分類別に比較しHGF,関連因子,接着因子によるDukes分類への寄与度および診断率を検討した.成績:1)HGFとリンパ管侵襲度*,リンパ節転移度,肝転移の有無との間に有意な関連を認めた(*p<0.05,p<0.01).2)HGFとIL-6,TGF-β1,ELAM-1,VCAM-1*との間に有意な相関を認めた(p<0.01,*p<0.05).3)HGFおよびIL-6はDukes分類に従い上昇傾向を示し,D群はA,B,C群と比較して有意に高値であった(p<0.01).4)Dukes A・B群とC群,D群の分類にはHGF,IL-6,ELAM-1が高く寄与した.結語:HGFはIL-6,TGF‐β1の誘導に伴う産生亢進により大腸癌細胞のリンパ管侵襲を高め,リンパ節・肝転移成立に促進的に関与することが示唆された.また,Dukes C・D群診断におけるHGF,ELAM-1の感度(67.7%)およびHGF,IL-6の特異度(86.4%)は,従来の腫瘍マーカー,画像診断などと比較しても劣らず臨床的に有用と考えられる.
索引用語
HGF, colorectal cancer, Lymph node metastasis, hepatic metastasis, Dukes' classification
別刷請求先
葦沢 龍人 〒193-0998 八王子市館町1163 東京医科大学八王子医療センター消化器外科
受理年月日
2002年2月27日
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