症例報告
非還納性sigmoidoceleの1手術例
石井 隆道, 鷲田 昌信, 西平 友彦, 金子 猛, 岩井 輝, 井上 章
浜松労災病院外科
症例は88歳の女性.主訴は嘔吐と下腹部痛.腹部膨満と右下腹部の圧痛,反跳痛を認めた.腹部単純X線像で小腸と大腸に拡張を認めた.大腸癌イレウスを疑い施行した注腸造影や腹部CTで糞便が充満したS状結腸係蹄が骨盤底深くまで下降していた.腹膜刺激症状を呈し,血液検査でも炎症反応を認めたため同日手術を施行した.開腹所見で硬便が大量に充満した長いS状結腸係蹄が,会陰まで深く拡大したダグラス窩に嵌入していたためsigmoidoceleと診断した.S状結腸係蹄の肛門側は空虚であったので,sigmoidoceleが腸管閉塞機転と考えた.骨盤底形成術としてダグラス窩の入口部を縫合閉鎖した.術後15か月の現在まで症状の再発は認めていない.Sigmoidoceleは通常は慢性排便障害として経過するが,非還納性内ヘルニアによる腸閉塞で手術に至った症例はきわめてまれであるため報告する.
索引用語
sigmoidocele, bowel obstruction, internal hernia
別刷請求先
石井 隆道 〒430-8525 浜松市将監町25 浜松労災病院外科
受理年月日
2002年1月30日
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