臨床経験
広範切除・gluteal fold flapにより肛門機能を温存しえた肛門周囲Paget病の1例
猪熊 滋久, 石田 秀行, 橋本 大定, 高松 亜子*
埼玉医科大学総合医療センター外科, 同 形成外科*
広範に進展した肛門周囲Paget病に対し,広範切除とgluteal fold flapによる再建を用い,良好な結果を得た1例を経験したので報告する.症例は83歳の女性.肛門周囲に14cm×10cm大の全周性の湿疹様変化を認め,当科受診.生検にてPaget病の診断を得た.他臓器に悪性腫瘍の合併を認めず,局所切除を行った.肉眼的皮膚側境界面から3cm離れた部位と歯状線よりおのおの4点迅速組織診を行い,腫瘍組織のないことを確認し,皮下を含めた広範囲切除を行った.校門周囲の広範な欠損に対しgluteal fold flapを用いた全層有茎皮弁による再建を行い,S状結腸に双孔式人工肛門を造設した.皮弁定着後人工肛門を閉鎖した.術後26か月経過した現在,健在で,肛門機能の低下も見られていない.今回の方法は,肛門および会陰周囲の植皮を必要とする手術の場合に多く用いられる中間層植皮に比べ,皮弁の拘縮や肛門狭窄などの発生もなく,有用な方法であると思われた.
索引用語
perianal Paget's disease, gluteal fold flap, perianal reconstruction
日消外会誌 35: 1453-1456, 2002
別刷請求先
猪熊 滋久 〒350-8550 川越市鴨田1981 埼玉医科大学総合医療センター外科
受理年月日
2002年5月1日
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