症例報告
Transcatheter arterial infusionで縮小した肝細胞癌の血行性腹直筋転移の1例
伊神 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 太平 周作, 森 俊治, 服部 弘太郎, 水野 隆史, 杉本 昌之, 深見 保之
名古屋第二赤十字病院外科
症例は68歳の女性で,C型肝炎ウイルス陽性の肝硬変で経過観察中,右下腹部腫瘤と肝腫瘍が発見された.腹部CTで,肝左葉と右腹直筋内に造影される腫瘍を認めた.肝腫瘍に対し左・中肝動脈から,右腹直筋内腫瘍に対し右下腹壁動脈から,エピルビシンとリピオドールの選択的動脈注入(TAI)を施行した.約1か月後,肝腫瘍は若干縮小,腹直筋腫瘍は著明に縮小した.肝腫瘍に対して,肝予備能が不良で肝切除術よりTAIの追加治療が必要で,腹壁欠損が軽度であることから,腹直筋腫瘍切除術を施行した.病理組織学的検索で腫瘍は大部分が壊死に陥っていたが,残存していた腫瘍細胞から肝細胞癌の転移と診断した.術後5か月で,腹直筋転移の再発なく経過観察中である.肝生検や経皮的エタノール局所療法などの経皮的穿刺の既往のない,肝細胞癌の腹直筋転移は極めてまれで,腹直筋転移巣に対する下腹壁動脈からのTAIは極めて有効であり,文献的に自験例が第1例目であった.
索引用語
hepatocellular carcinoma, metastasis of the rectus abdominis muscle, transcatheter arterial infusion
日消外会誌 35: 1507-1511, 2002
別刷請求先
伊神 剛 〒466-8650 名古屋市昭和区妙見町2-9 名古屋第二赤十字病院外科
受理年月日
2002年5月29日
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