直腸癌穿孔手術後に発症したcritical illness polyneuropathyの1例

大沢　常秀, 徳原　克治, 小島　善詞, 馬殿　芳郎

回生会宝塚病院外科

　49歳の女性．直腸癌穿孔による腹膜炎，敗血症性ショックのため緊急開腹術を施行した．術後多臓器不全を呈し，人工呼吸管理下にエンドトキシン吸着，持続的血液濾過透析を施行した．多臓器不全の回復とともに50日目から意識は改善し呼吸器から離脱したが，四肢麻痺・球麻痺の状態で，深部反射も消失していた．CTで脳に器質的変化認めず，髄液検査では軽度の蛋白増加を認めた．抗ガングリオシド抗体は陰性であった．末梢神経伝導検査では活動電位は著明に低下していた．術後4か月に上肢の筋力のみやや改善したが，嚥下・構音障害のため経過不良である．本例は，重症敗血症に合併したcritical illness polyneuropathy（CIP）の典型例であると診断した．CIPは敗血症・SIRSの病態で発現するpolyneuropathyで，欧米では詳細に報告されているが本邦での報告例はほとんどなく，類似症例の集積と本症の今後の原因究明が望まれる．

索引用語
critical illness polyneuropathy, SIRS, muscle weakness

別刷請求先
大沢　常秀　〒665-0022　宝塚市野上2-1-2　回生会宝塚病院

受理年月日
2002年7月24日

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