原著
胆管癌の上皮内進展部における細胞増殖能,細胞活性およびp53遺伝子産物の解析
舩渡 治1)2), 菅井 有1), 上杉 憲幸1), 中村 眞一1), 吉田 徹1)2), 新田 浩幸2), 川村 英伸2) 須藤 隆之2), 佐々木 亮孝2), 斎藤 和好2)
岩手医科大学中央臨床検査部臨床病理部門1), 岩手医科大学医学部第1外科講座2)
はじめに:胆管癌では高頻度に上皮内進展を伴うことが知られているが,その生物学的特徴は明らかにされていない.我々は,上皮内進展部(intraepi thelial spread portion:IESP)と浸潤部(invasive portion:IP)の差異を明らかにする目的でMIB-1 positive rate(MIB-1 PR),AgNOR dot数(AgNOR数)およびp53 positive rate(p53 PR)について解析した.方法:対象は胆管癌切除例20例で,MIB-1 PR,AgNOR数をそれぞれ算出した.p53 PRは4段階に分類し評価した(PR<5%:-;5≦PR<25:+;25≦PR<50:2+PR≧50:3+).結果:MIB-1 PRはIESP:21.5%,IP:20.2%で両群間に有意差はみられなかった.AgNOR数はIESP:2.2,IP:3.3で浸潤部で有意に高かった(p=0.0012).p53陽性例はIESP:8/20例(40%),IP:13/20例(65%)であった.p53陽性の癌の多くは上皮内進展部でも過剰発現していた.考察:上皮内進展部の増殖能は浸潤部のそれと差がないことが明らかになった.細胞活性は上皮内進展部では低いことが推測された.p53過剰発現は両者で関与していることが示唆された.
索引用語
intraepithelial spread of bile duct carcinoma, invasive portion of bile duct carcinoma, cell activity, proliferative activity, p53 gene product
別刷請求先
舩渡 治 〒020-8505 盛岡市内丸19-1 岩手医科大学医学部中央臨床検査部臨床病理部門
受理年月日
2002年9月25日
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