急性腹症で発症した古典的結節性多発動脈炎の1例―本邦小腸病変開腹50症例の検討―

高田　知明^1）2）, 吉田　秀明^1）, 塚田　守雄^1）, 加藤　紘之^2）

余市協会病院外科^1）, 北海道大学腫瘍外科^2）

　症例は79歳の男性．26年前に空腸腸間膜動脈瘤破裂の開腹歴があり，高血圧症と脳梗塞で脳神経外科通院中であった．主訴は腹痛と嘔吐で腸閉塞症の診断で当院へ入院した．入院時，腹部膨満と臍周囲に圧痛を認めたが腹部腫瘤は触知せず腹膜刺激症状を認めなかった．腹部単純X線検査，腹部エコー検査，腹部CTで小腸閉塞像を呈していた．絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した．開腹するとTreitz靱帯から約2mの回腸30cmに虚血性変化を認め，対応する腸間膜が扇状に浮腫，出血を呈していた．病理組織学的には虚血性小腸炎像と腸間膜筋性動脈の壊死性動脈炎が認められた．厚生省特定疾患の診断基準に基づき，古典的結節性多発動脈炎と最終診断した．術後経過は良好であった．急性腹症で発症する結節性多発動脈炎は極めてまれであり，自験例を含めた本邦小腸病変開腹50症例の集計検討を加えて報告する．

索引用語
polyarteritis nodosa, acute abdomen, ischemic enteritis

別刷請求先
高田　知明　〒046-0003　北海道余市郡余市町黒川町85　余市協会病院外科

受理年月日
2002年9月25日

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