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第36巻 第3号 2003年3月 [目次] [全文 ( PDF 76KB)]
症例報告

腹腔内出血で発症した膵巨細胞癌の1例

田中 善宏, 横尾 直樹, 北角 泰人, 白子 隆志, 田中 千弘, 浦 克明, 濱洲 晋哉, 長田 博光, 岡本 清尚

高山赤十字病院外科, 同 病理

 腹腔内出血を契機に発見された退形成性膵管癌(巨細胞型)の1例を経験した.症例は84歳の女性.主訴は上腹部痛.腹部USで腹水貯留と膵尾部の径4.5cm大の腫瘤を認め,腹部造影CTで脾静脈から門脈本幹への陰影欠損と,胃の大彎側に怒張した血管影を認めた.緊急開腹術により,怒張した大網静脈からの出血と判明し,結紮止血術を施行した.また,膵尾部腫瘤の組織生検にて,膵巨細胞癌と診断されたが,術後30日目に肺・肝転移を認めたため,根治術の施行は断念した.その後,膵腫瘤の増大・肝転移は進行するものの,肺転移は術後1年目には消失するという稀有な経過をたどった.本疾患は,血管への浸潤性が高く,自験例でも脾静脈の腫瘍塞栓による側副血行路の発達・怒張・破綻が腹腔内出血の原因と考えられた.本疾患の手術適応については,その極めて高い血行性転移率を考慮し,慎重に検討する必要がある.

索引用語
pancreas cancer, giant cell carcinoma, pleomorphic carcinoma

日消外会誌 36: 219-223, 2003

別刷請求先
田中 善宏 〒506-0025 高山市天満町3-11 高山赤十字病院外科

受理年月日
2002年11月27日

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