症例報告
空腸動静脈奇形による消化管出血により治療に難渋した1例
小松 周平, 内藤 弘之, 田村 祐樹, 目片 英治, 川口 晃, 阿部 元, 遠藤 善裕, 来見 良誠, 花澤 一芳, 谷 徹
滋賀医科大学外科学講座
小腸出血は,出血部位の同定が難しく,診断,治療において難渋することが多い.症例は75歳の女性で,約半年の反復するタール便と貧血で来院した.小腸造影および注腸検査で,上行結腸に多発する憩室と,回腸末端に約2cmの隆起性病変を認め,回盲部切除術を施行した.しかし,一か月後に再びタール便が出現し,腹部血管造影を施行したところ,空腸第3動脈の動脈枝末梢に,動静脈奇形(AVM)が存在することが確認された.手術は,術直前に予め血管造影で動静脈奇形が確認された第3空腸動脈にカテーテルを留置し,術中に留置カテーテルからインジゴカルミンを注入して病変部位を含む支配領域を染色して切除する方法を行った.手術後の経過は良好で,現在,消化管出血を認めていない.小腸出血の診断には,血管造影が有効であり,術中カテーテル留置による病変部位を含む染色法が,開腹時の切除部位同定に極めて有効であると考えられた.
索引用語
arteriovenous malformation (AVM), intestinal bleeding, angiography
別刷請求先
小松 周平 〒605-0981 京都市東山区本町15-749 京都第一赤十字病院外科
受理年月日
2002年11月27日
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