症例報告
壊死型虚血性大腸炎の1治験例―CEA高値を考察―
櫻井 孝志, 立松 秀樹, 山高 浩一, 山本 貴章, 有澤 淑人, 川原 英之
川崎市立井田病院外科
症例は84歳の女性.平成14年2月腹痛・嘔吐・下痢・血便を主訴に入院.既往歴として高血圧・狭心症・糖尿病があり内服治療中であった.便細菌培養にて病原性大腸菌O-1を検出,CT・下部消化管内視鏡検査にて下行結腸に壊死を伴う炎症を認め,細菌性腸炎による脱水を誘因とした虚血性大腸炎と診断した.入院翌日のCEAが106.1ng/mlと異常高値を示し,悪性腫瘍の検索を行ったが病変を認めず.26日後のCEA再検査では正常化していた.3月13日下行結腸切除術および人工肛門造設術施行した.病理診断上悪性所見を認めず,免疫組織化学染色によるCEA局在も正常であった.検索上,虚血性腸炎におけるCEA上昇は,今らの1例報告のみであった.CEA高値を呈した機序は不明であった.発症時に細菌性腸炎に罹患していたことによるCEA産生活性化の可能性や,膿瘍腔内に便汁が多量に貯留した可能性などの複合的な要素の関与が考えられた.
索引用語
ischemic colitis, carcinoembryonic antigen, bacterial enterocolitis
別刷請求先
櫻井 孝志 〒211-0035 川崎市中原区井田2-27-1 川崎市立井田病院外科
受理年月日
2002年11月27日
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