症例報告
胃癌にて胃全摘術後の骨転移との鑑別に苦慮した骨軟化症の1例
中川 登, 山根 哲郎, 竹田 靖, 北井 祥三, 岡野 晋治, 山口 正秀, 菅沼 泰, 中西 正芳, 谷 直樹, 安川 林良
松下記念病院外科
進行胃癌で胃全摘術後に腰痛を認め,骨転移と診断したが,結果的に骨軟化症であった症例を経験した.骨転移は,骨シンチグラムでの集積像,MRIでのT1強調の低信号像,T2強調の高信号像,血中アルカリフォスファターゼ値(ALP)の上昇などで診断するが,骨軟化症では骨シンチグラムでの肋軟骨接合部の濃い念珠状の集積像と血中カルシウム値(Ca)の低下が特徴的で,MRIでは両者の鑑別は困難であった.胃切除後の骨軟化症は,術後早期からの日光浴,運動,乳製品の摂取,Caの定期的な検査(低カルシウム血症時のカルシウム製剤,ビタミンD製剤投与)などで予防・治療が可能であり,骨転移との鑑別が困難な可能性がある以上,この問題を少しでも解決するためにも,胃切除後の骨軟化症の予防・治療に努めることが必要と考えられる.
索引用語
gastric carcinoma, bone metastasis, osteomalacia
別刷請求先
中川 登 〒570-8540 守口市外島町5-55 松下記念病院外科
受理年月日
2002年11月27日
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