症例報告
特殊な網嚢ヘルニアの1例
田中 善宏, 横尾 直樹, 木元 道雄, 白子 隆志, 足立 尊仁, 吉田 隆浩, 浦 克明, 濱洲 晋哉, 長田 博光, 北村 好史
高山赤十字病院外科
症例は53歳の男性.平成13年9月22日,バスを運転中に激しい腹痛が出現し,当院受診.腹部単純写真で小腸niveau,腹部CTで胃の小彎側に拡張する小腸を認め,イレウスの診断で保存的治療を開始した.24時間後,腹膜刺激症状が出現し,腹部US・CTにて腹水を確認したことより,内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,緊急開腹術を施行.小腸は横行結腸を乗り越えて大網を頭側に押し上げ,胃結腸間膜より胃の背側(網嚢内)に嵌入し,小網側の網嚢内にて暗赤色に変色していた.絞扼解除により血行改善したため,腸切除は要しなかった.大網には裂孔は存在せず,網嚢内での生理的癒着部の間隙がヘルニア門であった.術後経過は良好で9病日に退院した.ヘルニア内容は回腸,ヘルニア門は網嚢内腔,ヘルニア嚢は大網・胃結腸間膜であった.つまり,どの層にも裂隙は認めない極めて特異な形態であり,文献検索ではこのような症例の本邦報告例は存在しなかった.
索引用語
internalhernia, strangulation ileus, epiplo-enterocele
別刷請求先
田中 善宏 〒506-0025 高山市天満町3-11 高山赤十字病院外科
受理年月日
2003年1月22日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|