症例報告
大量の門脈・上腸間膜静脈内ガス血症(PVG)を呈した広範粘膜壊死の1例:粘膜病変温存の妥当性と危険性について
森脇 義弘, 吉田 謙一, 山岸 茂, 長谷川 聡, 小菅 宇之, 山本 俊郎, 杉山 貢
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター救命救急センター
門脈・上腸間膜静脈内ガス血症で,広範粘膜壊死部分を温存したが全層性壊死に至らず救命しえた症例を経験した.
81歳の男性,腹膜炎症状を呈し,腹部CT, US検査で門脈・上腸間膜静脈内ガスを認め緊急手術となった.回腸空腸の腸管壁,腸間膜に浮腫と点状出血を認め,一部10cmが全層性壊死で同部を切除した.切除断端の粘膜面は黒色であった.全層性壊死部以外は広範粘膜壊死であったが,腸管壁の緊張や蠕動は保たれ,腸間膜動脈の拍動は良好,静脈内血栓像も見られず,漿膜筋層のviabilityは保たれていたと判断した.一時的腸間膜動脈領域の灌流不全による非閉塞性腸管虚血で,全身血圧の維持および腸間膜血流の保持により虚血の進展は防止可能と判断し,1期的に吻合した.術後肺炎を併発したが,腹部所見の悪化はなく,温存した広範粘膜壊死腸管は全層性壊死とならず,第49病日に軽快転院した.
索引用語
portal venous gas, nonoclusive mesenteric ischemia (NOMI), salvage of intestinal mucosal, necrosis
別刷請求先
森脇 義弘 〒232-0024 横浜市南区浦舟町4-57 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター救命救急センター
受理年月日
2003年1月22日
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