症例報告
食道癌を合併した先天性食道気管支瘻の1例
長井 和之, 柳橋 健, 宮原 勅治, 岡田 憲幸, 和田 道彦, 正井 良和, 橋本 隆, 今井 史郎, 小西 豊, 梶原 建熈
神戸市立中央市民病院外科
症例は63歳の男性.幼少時より頻回の咳嗽を,特に成人後はビール摂取時の咳嗽を自覚していた.また,肺炎を繰り返していた.約3年半前に食道気管支瘻と診断されていたが,今回当科にて食道造影,食道内視鏡,気管支鏡の各検査を行い,胸部中部食道前壁と左主気管支との間に瘻孔を確認した.また瘻孔対側となる食道後壁には径約2cmの隆起性病変(扁平上皮癌)を認めた.同病変を内視鏡的に切除したところ深達度sm2であったため,右開胸開腹にて食道切除を行い,瘻管は結紮・切離した.病理組織学的には瘻管内腔は重層扁平上皮で覆われており,粘膜筋板を伴っていた.病歴,術中所見,病理組織学的所見よりBraimbridge II型先天性食道気管支瘻と診断した.本疾患と食道癌との合併例は極めてまれである.当症例では瘻孔と食道癌病変の位置関係から,瘻孔の存在が癌発生の一因になった可能性も考えられた.
索引用語
congenital esophagobronchial fistula, esophageal cancer, adult
別刷請求先
長井 和之 〒650-0046 神戸市中央区港島中町4-6 神戸市立中央市民病院外科
受理年月日
2003年1月22日
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