症例報告
肝実質内に腫瘍巣を指摘しえなかった胆管内発育型肝細胞癌の2切除例
近藤 礎, 堂野 恵三, 左近 賢人, 永野 浩昭, 林 太郎, 梅下 浩司, 中森 正二, 若狭 研一*, 門田 守人
大阪大学大学院病態制御外科学, 大阪市立大学病院病理部*
肝実質内に腫瘍巣を指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌はまれで,当施設肝細胞癌切除例(484例)の0.4%(2例)に認めた.症例1は前区域胆管内に腫瘍栓を認め,前区域切除術と腫瘍栓の摘出術を,症例2は左肝管内腫瘍栓と肝S8に孤立性の肝細胞癌を認め,腫瘍栓摘出をともなう肝左葉切除術と肝S8の腫瘤に対するPEITを施行した.切除標本の病理組織学的検討では,いずれも肝実質内に腫瘍巣は指摘できず,症例1が低分化型,症例2は低分化型と高分化型肝細胞癌(肝S8腫瘤)であった.予後は,症例1が術後5か月目に残肝多発再発で原病死.症例2は残肝多発再発に対してTAEをくり返したが,術後3年目に原病死している.肝実質内に腫瘍巣が指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌は低分化で,その予後は不良であった.このような症例に対しては手術に加え,有効な補助療法の開発が急務と考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, bile duct tumor invasion
別刷請求先
堂野 恵三 〒565-0871 吹田市山田丘2-2,E-2大阪大学大学院病態制御外科学
受理年月日
2003年2月26日
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