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第36巻 第8号 2003年8月 [目次] [全文 ( PDF 64KB)]
症例報告

外傷を契機として発症したSpiegelヘルニアの1例

塚田 学, 斎藤 拓朗, 土屋 貴男, 佐藤 佳宏, 見城 明, 佐藤 直, 阿部 幹, 後藤 満一

福島県立医科大学第1外科

 外傷性腹壁ヘルニアはまれな疾患である.今回,外傷直後にSpigelian腱膜部(傍腹直筋外縁部)に発症した外傷性腹壁ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は20歳の男性.平成13年6月10日,交通事故にて受傷し下腹部の痛みを主訴として当科へ搬送された.左右両側のSpigelian腱膜部にそれぞれ,自発痛と圧痛を伴う5×3 cmの膨隆と3×2 cmの腱膜欠損を触知した.腹部CT上,左傍腹直筋外縁の膨隆部には皮膚直下に小腸を認め嵌頓ヘルニアの状態であったが,徒手整復にて容易に還納できた.その他,腰椎骨折,左大腿骨骨折,肺挫傷,外傷性肝損傷(日本外傷学会分類Ib)を認めた.左大腿骨骨折に対する観血的整復術および腰椎骨折のため約3か月に及ぶ臥床を要し,この間の安静によりヘルニアは保存的に治癒した.外傷性腹壁ヘルニアは通常手術が必要とされているが本症例のように膨隆がなく経時的に腱膜欠損が縮小傾向を認める場合は保存的に治癒する可能性がある.

索引用語
acute traumatic abdominal hernia, Spigelian hernia

日消外会誌 36: 1205-1209, 2003

別刷請求先
後藤 満一 〒960-1295 福島市光が丘1 福島県立医科大学第1外科

受理年月日
2003年2月26日

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