症例報告
メッケル憩室炎穿通による後腹膜炎の1例
佐瀬 善一郎, 星野 豊, 木暮 道彦, 根本 剛, 松山 真一, 郡司 崇志, 塚田 学, 添田 暢俊, 寺島 信也*, 後藤 満一
福島県立医科大学医学部外科学第1講座, 公立藤田総合病院外科*
メッケル憩室炎が憩室間膜へ穿通,後腹膜炎を呈し,治療に難渋したまれな1例を経験したので報告する.症例は高血圧,糖尿病を有する69歳の男性で,腹痛を主訴に入院した.翌日に39℃の発熱,右側腹部の筋性防御が出現,画像上腹水と後腹膜の気腫を認めたため,十二指腸潰瘍の後腹膜穿通を疑い緊急手術を施行した.開腹するに十二指腸に穿通はなく,回盲部より50cm口側に壊死に陥ったメッケル憩室を認め憩室間膜付着部から後腹膜へ穿通し気腫を認めた.メッケル憩室穿通による後腹膜炎と診断し憩室切除,ドレナージ術を施行した.肉眼標本では憩室先端が壊死に陥っており,憩室間膜側へ約5mm大の穿通を認めた.組織所見では壊死の部分に残存粘膜や筋層が見られ,メッケル憩室炎であった.術後は敗血症性ショック,呼吸不全,高血糖,腸管麻痺などの併発により治療に難渋したが,保存的に軽快し術後3か月で退院し,退院後30か月の現在社会復帰を果たしている.
索引用語
Meckel's diverticulum, retroperitonitis
日消外会誌 36: 1316-1320, 2003
別刷請求先
佐瀬善一郎 〒960-1295 福島市光が丘1 福島県立医科大学医学部第1外科学講座
受理年月日
2003年3月26日
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