症例報告
肛門管への壁内転移が腟直接浸潤を呈した上部直腸癌の1例
水谷 聡, 塩谷 猛, 渋谷 哲男, 松本 光司*, 藤井 博昭**, 森山 雄吉
日本医科大学付属第二病院消化器病センター, 同 病理*, 順天堂大学病理**
我々は直腸癌が肛門側壁内に転移し,腟へ直接浸潤した症例を経験した.症例は63歳の女性.不正性器出血で婦人科受診し,腟入口部に1.5cm大の隆起性病変を認めた.諸検査後,多発進行直腸癌(上部直腸(Ra),肛門管(P))および子宮・腟直接浸潤,肝転移(H1)の診断で後方骨盤内臓全摘,肝左葉切除術を施行した.組織学的に主病巣(Ra)は中分化型腺癌であった.肛門管の副病変は高度のリンパ管侵襲を伴い,発育形式が粘膜下・筋層を主とし,構造・細胞異型が主病巣と類似していた.また,遺伝子解析の結果から,リンパ管を経由した壁内転移であると診断した.同病変が腟へ直接浸潤を来たしていた.直腸癌における壁内転移はまれであり,本症例のように壁内転移巣が主病巣から7cm離れ,さらに他臓器浸潤を呈する症例は報告されていない.予後も不良であり,今後さらに厳重な経過観察を必要とする.
索引用語
rectal cancer, intramural metastasis
日消外会誌 36: 1336-1341, 2003
別刷請求先
水谷 聡 〒211-8533 川崎市中原区小杉町1-396 日本医科大学付属第2病院消化器病センター
受理年月日
2003年3月26日
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