症例報告
胸部上部食道に発生した食道憩室内癌の1例
海老原 裕磨1)2), 久須美 貴哉1), 細川 正夫1), 加藤 紘之2)
恵佑会札幌病院外科1)
北海道大学院医学研究科腫瘍外科学分野2)
食道憩室に生じた癌の報告はまれである.われわれは,胸部上部食道の憩室内に発生した食道癌の1例を経験したので報告する.
症例は57歳の男性.食欲不振,体重減少を主訴に近医受診.上部消化管造影検査・内視鏡検査にて胸部上部食道憩室内に1型の隆起性病変が認められ,生検にて扁平上皮癌であった.17歳時に肺結核のため右肺上葉切除術を施行されているため開胸困難と考え,非開胸・胸骨縦切にて胸部食道全摘術ならびに胃管による後縦隔再建術を施行した.術中所見において,憩室は周囲の組織と強固に癒着しており,結核による牽引性憩室と考えられた.切除標本では,2.7×2.2 cmの1型の腫瘍が憩室内に認められ病理診断は高分化型扁平上皮癌で,pT3N0M0 stage II1)であった.病理学的に憩室入口部には正常食道粘膜が認められ,癌は憩室内に限局していた.
索引用語
esophageal carcinoma in diverticulum, esophageal diverticulum
日消外会誌 36: 1379-1384, 2003
別刷請求先
海老原 裕磨 〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学腫瘍外科学講座
受理年月日
2003年4月30日
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