症例報告
外傷性腸間膜欠損孔への内ヘルニアにより遅発性に小腸壊死をきたした1例
高橋 徹也, 長田 俊一, 福島 忠男, 南湖 正男, 橋本 邦夫, 高橋 利通
横浜掖済会病院外科
症例は22歳の男性.腸閉塞の診断で入院.開腹手術歴はなく,約3週間前に交通事故による腹部打撲の既往があった.保存的治療を行ったが,翌日になって腹膜刺激症状が出現したため,緊急手術を施行した.開腹すると膿性腹水を認めた.回盲部から約1 mの回腸腸間膜に3 cm大の欠損孔があり,遠位の回腸が内ヘルニアを起こしてイレウスとなっていた.さらに腸間膜付着部の対側で小腸は壊死,穿孔をきたし,膿瘍を形成していた.内ヘルニア腸管の虚血はなく,穿孔腸管を腸間膜欠損部を含めて切除,端々吻合した.病理学的に腸間膜欠損部に繊維化と炎症細胞浸潤が認められ,他の小腸間膜にも硬結が散在し腸管の短縮を認めたこと,腹部打撲の既往があることから,外傷性小腸間膜損傷後に修復された欠損孔に内ヘルニアを起こし,イレウスの進行のため腸間膜欠損腸管の虚血が助長され,遅発性に壊死,穿孔にいたったものと推測された.術後18日目に軽快退院した.
索引用語
blunt abdominal trauma, transmesenteric hernia, necrosis of the intestine
日消外会誌 36: 1426-1430, 2003
別刷請求先
高橋 徹也 〒231-0036 横浜市中区山田町1-2 横浜掖済会病院外科
受理年月日
2003年4月30日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|