症例報告
胸部食道に壁内転移を認めた進行上中部胃癌の1例
高林 司, 金井 歳雄, 中川 基人, 坂田 道生, 松本 圭五, 中村 威, 鈴木 淳司
平塚市民病院外科
症例は64歳の男性で,食欲低下,嘔吐を主訴に来院.上部消化管造影および内視鏡検査で胃噴門より体中部に及ぶ全周性の潰瘍浸潤型病変を,胸部中部食道に径30,10 mmの2個の隆起性病変を認めた.胃および食道病変に連続性はなかったが,生検による病理診断は両病変とも中分化型管状腺癌であった.食道に壁内転移を伴う胃癌と診断し,開腹術を施行した.胃近傍より大動脈周囲に至る多数のリンパ節に腫大を認め予後不良と判断し,膵体尾部,脾合併切除を伴う胃全摘を行い食道切除は施行しなかった.術後CDDP,5FUを中心とした化学療法,内視鏡的食道粘膜切除,鎖骨上・縦隔への放射線照射などを併用し,術後34か月と比較的長期の生存を得たが,多臓器転移のため死亡した.食道壁内転移を伴う胃癌症例の報告は少ないが,高度進行例が多く,治療として患者のQOLを考慮した外科的切除,化学・放射線療法の併用を考慮すべきであると思われた.
索引用語
gastric cancer, intramural metastasis, metastatic esophageal tumor
日消外会誌 36: 1504-1509, 2003
別刷請求先
高林 司 〒254-0065 平塚市南原1-19-1 平塚市民病院外科
受理年月日
2003年5月27日
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