症例報告
胃食道逆流症に対する腹腔鏡下Nissen噴門形成術施行後に難治性高位胃潰瘍をきたした1例
坪井 一人, 小村 伸朗, 矢野 文章, 柏木 秀幸*
東京慈恵会医科大学外科, 東京慈恵会医科大学附属柏病院外科*
症例は59歳の男性.食道裂孔ヘルニアに対し外来経過観察中,ヘルニアの増大と胸部灼熱感の増悪を認めたため腹腔鏡下Nissen噴門形成術を施行した.術中,胃の牽引の際に迷走神経前幹周囲より出血あり,超音波凝固装置にて止血を行っている.術後特に問題なく経過していたが,術後6か月頃より心窩部痛出現し,術後8か月時に施行した上部消化管内視鏡検査にて胃体上部小彎側に胃潰瘍を認めた.現在,逆流性食道炎に対する外科治療として腹腔鏡下Nissen噴門形成術は標準術式とされ,本術式における合併症としてはtight Nissenやslipped Nissenなどが一般的だが,本症例は,腹腔鏡下Nissen噴門形成術施行後難治性の高位胃潰瘍をきたした.本術式施行後胃潰瘍の報告例は本邦にはなく,欧米においても報告例は散見されるのみであり,非常に興味深い症例と思われ,文献的考察を加え報告する.
索引用語
gastroesophageal reflux disease, laparoscopic Nissen fundoplication, gastric ulcer
日消外会誌 36: 1510-1513, 2003
別刷請求先
坪井 一人 〒277-8567 柏市柏下163-1 東京慈恵会医科大学附属柏病院外科
受理年月日
2003年6月25日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|