症例報告
化学放射線療法後の難治性穿通性十二指腸潰瘍出血に対する外科治療にて救命しえた1例
山本 学, 岡村 健, 池田 泰治, 遠藤 和也, 藤 也寸志, 馬場 秀夫, 鴻江 俊治
国立病院九州がんセンター消化器外科
悪性リンパ腫の治癒後に発生した骨肉腫に対する化学療法後の難治性穿通性十二指腸潰瘍底からの動脈性出血に対し,空腸被覆を施行し救命しえた1例を経験したので報告する.
症例は,35歳の女性.主訴は吐血.既往として,20年前より腹腔内悪性リンパ腫に対する頻回の腹部手術と放射線,化学療法を施行されていた.平成14年10月2日,出血性ショックにて緊急手術を施行した.出血は,十二指腸球部後壁の潰瘍底からの動脈性出血であったため,出血部位を結紮した後,潰瘍で欠損した十二指腸球部前壁に空腸被覆,さらに食事の十二指腸への流入を防ぐためDavine変法にて胃空腸吻合を施行した.
放射線,化学療法後は,本症例のように著明な腸管の浮腫および硬化が認められる.このような悪条件の中,潰瘍で欠損した十二指腸部分の修復を閉鎖後,十二指腸前壁にRoux-Yによる遠位空腸にて被覆する手術を施行したところ,術後合併症なく,良好な結果を得た.その手術手技を中心に若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語
duodenal bleeding, post-radiation, post-chemotherapy
日消外会誌 36: 1549-1553, 2003
別刷請求先
山本 学 〒811-5133 長崎県壱岐郡郷ノ浦本村触682 壱岐公立病院外科
受理年月日
2003年5月27日
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