症例報告
脾破裂を契機に発見された成人T細胞性白血病の1例
湊 栄治, 藤野 一平, 杉平 宣仁, 松本 収生, 嶋 廣一, 三木 誓雄*
新宮市立医療センター, 三重大学第2外科*
症例は72歳の男性.近医受診中に,ショック状態となり当院に救急搬送された.来院時血圧84/60 mmHg,脈拍96/min,著明な腹部膨満を認めた.血液検査データにて高度貧血,白血球数および異常リンパ球比率の上昇を認めた.末梢血液像では分葉化傾向をもつ核の異常T細胞の増殖を認め,血清抗HTLV-1抗体も高値を示したため成人T細胞性白血病(ATL)と診断した.腹部造影CT検査にて,脾臓の横隔膜面に造影剤のpooling像が認められた.脾破裂による腹腔内出血の診断で緊急手術を施行したところ,脾臓の横隔膜面に破裂を認めたため脾臓摘出術を施行した.摘出した脾臓の病理組織学的所見では,皮髄構造は破壊,消失しており,ATLの脾臓への浸潤が認められた.脾破裂を来すような外傷の既往もなくATLの脾臓への浸潤に伴う脾破裂と考えられた.白血病により脾破裂を来すことはまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語
spontaneous splenic rupture, adult T cell leukemia
日消外会誌 36: 1571-1574, 2003
別刷請求先
湊 栄治 〒647-0072 新宮市蜂伏18-7 新宮市立医療センター外科
受理年月日
2003年5月27日
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