症例報告
約40年の長期経過中に発生した痔瘻癌の1例
埜村 真也, 前田 清, 小野田 尚佳, 柏木 伸一郎, 八代 正和, 平川 弘聖
大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科
約40年の長期経過中に発生した痔瘻癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は58歳の男性.主訴は肛門部痛.10代の頃より痔瘻,肛門周囲膿瘍を認めていた.強度の肛門部痛のため,当院入院となり,痔瘻壁からの生検にて痔瘻癌と診断された.精査にて仙骨前面への浸潤を認めたため,化学放射線療法を施行した後,腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本の病理組織診断にて多くの腫瘍細胞は壊死に陥っていた.重篤な合併症を認めず,術後52日目に軽快退院となった.痔瘻癌は進行した状態で発見されることが多く,腫瘍が周囲への広範な浸潤のため,十分な切除断端を得ることが困難であると予測される症例に対しては術前化学放射線療法も有用である可能性が示唆された.
索引用語
chronic anal fistula, fistula cancer
日消外会誌 36: 1646-1650, 2003
別刷請求先
前田 清 〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町1-4-3 大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科
受理年月日
2003年5月27日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|