大腸癌患者の予後判定におけるリンパ節転移個数の有用性―多変量解析を用いて―

湯川　寛夫, 赤池　信^＊, 杉政　征夫^＊, 武宮　省治^＊, 今田　敏夫

横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター
神奈川県立がんセンター消化器外科^＊

　目的：大腸癌におけるリンパ節転移個数の予後予測における有用性を検討する．対象：1990年から2000年までに治癒切除された大腸癌（肛門管癌除く）患者815例（男性487例女性328例，62.7歳）．stage 0 33例，stage I 174例，stage II 220例，stage IIIa 192例，stage IIIb 136例，stage IV 60例．リンパ節転移個数は0個，1～3個（1個，2～3個），4個以上の3群（4群）に分け，n因子は大腸癌取扱い規約に従い検討した．結果：術後生存日数において単変量解析でn因子はn2，n3，n4の各群間に有意差はみられなかった．リンパ節転移個数は各群間に有意差をみた．深達度，肝転移，腹膜播種，遠隔転移を加えた多変量解析は両者有意な予後規定因子となったが，n因子のrelative riskはn3とn4の間で逆転したのに対し転移個数は1次関数的に増加した．無再発日数においても単変量解析で転移個数はすべての群で有意差がみられたが，n因子はn2，n3，n4の間に有意差はみられなかった．多変量解析ではn因子が有意ではあるがrelative riskはn4群がn3群に比べ低値（n3 6.760，n4 5.722）となったのに対し，リンパ節転移個数ではすべて1次関数的に増加した．結語：リンパ節転移個数は生存率　再発予測について，単変量でも多変量解析でもn因子より有用である．リンパ節転移についてはその部位と共に転移個数についても考慮すべきであり，これらを術中所見の判定に用いることにより，適切な大腸癌のリンパ節郭清の一助となると考えられた．

索引用語
colorectal cancer, number of lymph node metastasis, TNM classification, Cox's proportional hazard model, prognostic value

別刷請求先
湯川　寛夫　〒232-0024　横浜市南区浦舟町4-57　横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター

受理年月日
2003年7月23日

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