症例報告
胆嚢炎手術後のMRCPが診断の契機となった無黄疸肝門部胆管癌の1切除例
藤井 努, 金子 哲也, 杉本 博行, 井上 総一郎, 竹田 伸, 長坂 徹郎*, 中尾 昭公
名古屋大学大学院病態制御外科学, 同 臨床検査医学*
症例は67歳の男性.2001年9月,腹痛,嘔吐にて近医を受診,急性胆嚢炎の診断のもと胆嚢摘出術を施行された.術後の磁気共鳴画像を用いた膵管胆道投影法(MRCP)にて総肝管に陰影欠損を認め,胆管癌の疑いで当院に紹介された.入院時,血清総ビリルビン値は1.0 mg/dlと正常で,胆道系酵素の上昇を認めず,腹部エコー上肝内胆管の拡張も認められなかった.精査の結果,総肝管から右肝管へ進展する狭窄所見の少ない肝門部胆管癌と考えられた.同年12月,尾状葉合併肝右葉切除術,肝外胆管切除術を施行した.肝門部胆管癌の無黄疸発見例の報告は散見されているが,それらのほとんどは無黄疸ではあるが胆道系酵素の上昇,肝内胆管の拡張を伴っており,血液検査所見,腹部超音波検査が診断の契機となっている.本症例はMRCPでのみ診断の契機が得られたものと考えられ,本検査の有用性が示唆された.若干の文献的考察を加え,報告する.
索引用語
hilar cholangiocarcinoma, non-icteric, MRCP
日消外会誌 36: 1682-1687, 2003
別刷請求先
藤井 努 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学大学院病態制御外科学
受理年月日
2003年6月25日
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