症例報告
腸閉塞症で発症した成人回腸迷入膵の1例
辻 和宏, 池田 宏国, 三谷 英信, 斉藤 誠, 岡原 正幸*, 平川 栄一郎**
屋島総合病院外科, 同 内科*, 香川県立医療短期大学臨床検査学科**
症例は76歳の女性.肺癌(高分化腺癌,IB期)の手術既往がある.開腹歴はない.腹痛,嘔吐を主訴に腸閉塞症の診断で入院し,保存的に一時改善したが腸閉塞が再発したため手術を行った.回腸末端から約150 cmの回腸壁が瘢痕状に狭窄しており同部の小腸を切除した.切除標本では腸間膜反対側に径20×15 mmの粘膜下腫瘍を認めた.病理組織学的所見では,粘膜下層から漿膜の脂肪組織にかけて多数の膵組織を認め,ランゲルハンス島,腺房細胞,膵導管を有しておりHeinrich I型迷入膵と診断した.迷入膵は胃,十二指腸など上部消化管に好発し,回腸迷入膵は比較的まれである.自験例は,開腹歴のない減圧処置に抵抗性の腸閉塞であり,さらに肺癌の小腸転移の可能性も考慮する必要があり,示唆に富む症例であった.
索引用語
heterotopic pancreas, ileus, ileum
日消外会誌 36: 1703-1707, 2003
別刷請求先
辻 和宏 〒761-0113 高松市屋島西町1857-1 屋島総合病院外科
受理年月日
2003年6月25日
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