症例報告
腸管切除により救命しえた溶血性尿毒症症候群を合併した病原性大腸菌O-157感染症の1例
丸山 起誉幸, 山崎 泰男, 内田 健二
上尾甦生病院外科
症例は58歳の女性で,下腹部痛と出血性水様下痢便を主訴に来院した.入院後,頻回の出血性下痢便と,右側を中心とした下腹部の圧痛の増強と反跳痛の出現,さらに腎機能異常を認めた.腹部CT所見では右半結腸壁に著しい浮腫性肥厚と,多量の腹水を認めた.以上より,出血性大腸炎を考慮しつつも,汎発性腹膜炎を否定できず,緊急手術を施行した.手術では,出血壊死性変化をきたしていた上行および横行結腸を切除し,回腸人工肛門および下行結腸粘膜瘻を造設した.術後,エンドトキシン吸着を施行.また,溶血性尿毒症症候群に対し,持続的血液透析濾過を施行した.便培養で病原性大腸菌は検出されなかったが,血清O-157抗体が陽性であり,病原性大腸菌O-157による出血性大腸炎と診断した.第78病日退院となった.汎発性腹膜炎を否定しえない出血性大腸炎の場合,その鑑別に難渋するが,治療の機会を逸することなく,手術的療法も考慮する必要がある.
索引用語
surgical treatment, Escherichia coli infection, hemolytic uremic syndrome
別刷請求先
丸山起誉幸 〒362-0051 上尾市地頭方 421-1 上尾甦生病院外科
受理年月日
2003年10月29日
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