原著
自律神経温存胃癌3群リンパ節郭清に必要な腹腔神経節,大小内臓神経と大動脈周囲リンパ節の局所解剖
野村 直人, 高橋 正純, 秋山 浩利, 森脇 義弘, 松田 悟郎, 国崎 主税, 山岡 博之, 嶋田 紘
横浜市立大学医学部外科学第2講座
はじめに:術後のQOLを損なわない胃癌3群リンパ節郭清を行うために必要な神経組織,リンパ節,脈管の局所解剖を検討した.方法:解剖用遺体31体で,大小内臓神経の走行形態,腹腔神経節の形態,腹腔神経叢の位置関係について肉眼的に検討,14体で,大動脈周囲組織水平断標本を作製,リンパ節個数,リンパ節と腹腔神経節の位置関係,神経組織と小血管の位置関係を組織学的に検討した.結果:大小内臓神経は,腹腔内に現れた後,横走し,腹腔神経節に連なり,走行様式に左右差はなかった.腹腔神経節は,1個の神経節で構成されるType Iと複数の神経節で構成されるType IIに分類でき,左右ともType Iが多かった.左右大小内臓神経が腹腔内に現れる位置を比較すると,右は左に比べより外側かつ頭側に位置していた.リンパ節個数は,16a2interが6.4個,16a2lateroは7.5個,16b1interが4.4個,16b1lateroは5.2個と,a2,b1ともにlateroの方がinterより多くみられた.腹腔神経節・大小内臓神経背側の16a2リンパ節は全症例で存在し,平均個数はinterは3.1個,lateroは4.1個であった.腹腔動脈や上腸間膜動脈,総肝動脈を取り囲む神経組織の密な層の中にリンパ節はみられなかった.考察:有効かつ安全な胃癌D3郭清には,大動脈周囲リンパ節や腹腔神経叢の立体的な位置関係を含めた局所解剖を熟知することが必要で,とくに腹腔動脈根部をメルクマールとし,神経節の形態ごとに郭清方法を分けることが重要と考えられた.
索引用語
celiac ganglia, splanchnic nerve, para-aortic lymph nodes, anatomy
別刷請求先
野村 直人 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部外科学第2講座
受理年月日
2003年11月26日
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