臨床的・経済的アウトカムと患者満足度からみた膵頭十二指腸切除術に対するクリニカルパス導入の意義

袴田　健一, 鳴海　俊治, 豊木　嘉一, 十束　英志, 吉原　秀一, 森田　隆幸, 佐々木　睦男

弘前大学第2外科

　目的：高侵襲かつ術後合併症発生率の高い膵頭十二指腸切除術に対するクリニカルパス（CP）導入のアウトカム評価から，高バリアンス手術周術期管理におけるCP導入の意義について検討する．方法：2000年10月から2002年8月までの膵頭十二指腸切除術施行40例を対象とした．2001年8月以前は周術期薬剤内容以外を主治医裁量とし（CP導入前，14例），それ以降は導入前期経過良好例を基に作成したCPによる管理を義務付けた（CP導入後，26例）．結果：合併症発生率はCP導入前後で有意差を認めなかった．術後入院日数はCP導入後有意に減少し（中央値30 vs. 34日，p＝0.04），特にバリアンス非発生例（46％）で著明に短縮した（24 vs. 30日，p＝0.01）．術後医療費はCP導入後有意に減少し（814,640 vs. 954,960円，p＝0.02），特に注射料，処置料，検査料の低下が寄与していた．バリアンス非発生例での術後医療費減少は著明で（656,780 vs. 842,160円，p＝0.005），入院日数減少に伴う入院基本料の減少が主因であった．術後入院日数に関するアンケートではパス完遂例73％，脱落例で42％が満足と答えた．結論：CPの高バリアンス手術への導入は，周術管理の安全性を維持しながら，特にバリアンス非発生例の臨床的，経済的アウトカムを高め，結果的に診療全体のアウトカムを高める．

索引用語
clinical pathway, pancreaticoduodenectomy, cost quality outcome, hospital stay, variance

別刷請求先
袴田　健一　〒036-8562　弘前市在府町5　弘前大学第2外科

受理年月日
2003年11月26日

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