症例報告
血管輪を伴う右側大動脈弓に合併した胸部中部食道癌の1切除例―国内外における報告例の検討―
霜田 雅之, 山神 和彦, 肥田 侯矢, 吉田 良, 山本 秀和, 山本 栄司, 小西 靖彦, 武田 惇
大阪府済生会泉尾病院外科
右側大動脈弓に合併した胸部食道癌の1手術例を経験した.患者は64歳の男性で食道透視,上部消化管内視鏡にて胸部中部食道癌と診断された.胸部単純X線写真,3D-CTで右大動脈弓を認め,左鎖骨下動脈が下行大動脈に存在する憩室から分岐する血管異常を認めた.術前化学療法後,左開胸下に食道亜全摘術・胸骨後経路胃管再建術を施行した.胸腔内操作で,食道前面に存在し大動脈憩室と左肺動脈との間にある左動脈管の切離を試みた.しかし,憩室壁は薄く,動脈管内に血流もあり,憩室から左動脈管を安全に同定することが困難であった.そこで左反回神経を追求することで左動脈管を確認,切離し,食道に到達できた.右大動脈弓を伴った食道切除術は,開胸法,血管系の変異に伴う手術手技に特別な注意が必要であり,術前の詳細な解剖学的検討を行うべきである.
索引用語
esophageal cancer, right aortic arch, vascular ring
別刷請求先
霜田 雅之 〒551-0032 大阪市大正区北村3-4-5 大阪府済生会泉尾病院外科
受理年月日
2003年12月19日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|