同時性食道多発癌の臨床像

妻鹿　成治, 細川　正夫, 久須美　貴哉, 安部　達也, 草野　真暢, 西田　靖仙, 藤田　昌宏^＊　

恵佑会札幌病院外科, 恵佑会札幌病院病理^＊

　目的：同時性食道多発癌と非多発癌とを比較し，臨床病理学的に検討した．方法：1995年～2001年までの術前未治療であった食道癌切除例574例を対象に，同時性食道多発癌116例（19.7％）と非多発癌458例とを比較，検討した．多発癌症例はすべて3領域リンパ節郭清を伴う根治術がなされた．結果：同時性多発癌の頻度は19.7％で，非多発癌と比べ，(1)咽頭癌の併存が高頻度，(2)累積5年粗生存率において予後不良，である点で有意であった．性差，喫煙，アルコール摂取など疫学的因子やリンパ節転移陽性率などでは有意差は得られなかった．多発癌の副病巣について，(1)すべて表在癌でM癌が83.6％，(2)0-IIb，0-IIcが89.7％，(3)腫瘍径1 cm以下が58.8％，(4)主病巣の口側もしくは肛側3 cm以内に73.3％が存在，といった特徴を有した．結語：食道多発癌は近年，内視鏡検査の精度向上に伴い発見率が増加しつつあり，内視鏡的粘膜切除（endoscopic mucosal resection）や外科的根治術，放射線化学療法などの治療法の選択，フォローアップの上で重要となると考えられた．

索引用語
multiple carcinoma of the esophagus, squamous cell carcinoma of the esophagus

別刷請求先
妻鹿　成治　〒060-8638　札幌市北区北15条西7丁目　北海道大学腫瘍外科

受理年月日
2003年12月19日

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