原著
胃癌EMR後の遺残により手術を施行した症例から学ぶこと
大東 雄一郎, 山田 行重, 成清 道博, 上野 正闘, 内田 秀樹, 頼木 領, 蜂須賀 崇, 水野 崇志, 中島 祥介
奈良県立医科大学消化器・総合外科
はじめに:EMRは早期胃癌に対する治療法として広く普及しており,胃癌治療ガイドラインでも標準的治療法として位置付けられている.しかし,EMR後の遺残・再発はまれではなく,また遺残・再発病変に対する追加治療法も一定していないのが現状である.胃癌EMR後の遺残・再発病変に対する適切な追加治療法などについて検討した.対象と方法:胃癌EMR後の遺残・再発により胃切除術を行った症例27例29病変を対象とし,EMR施行目的別に,1)EMR適応症例(15例16病変),2)診断目的症例(8例8病変),3)EMR適応外症例(5例5病変)に分けて検討した.結果:1)EMR適応症例では,手術までに長期間経過した1例が深達度MPに進行しており,1群リンパ節転移を認めた.2)診断目的症例では,8例のうち6例は結果的にEMR適応症例であったが,この6例はすべて多分割切除であった.3)EMR適応外症例では,未分化型癌の1例が手術時にはリンパ節転移を認め,術後再発により死亡した.まとめ:1)EMR適応基準を満たす症例のEMR後遺残に対しては,長期間経過していなければ胃局所切除術を含めた縮小手術で良好な予後が期待できる.2)診断目的でEMRを行う場合でも,EMR術者は常に癌の場合を想定し,一括切除を心掛けるべきである.3)EMR適応拡大が議論されているが,特に未分化型癌に対しては慎重に検討する必要がある.
索引用語
endoscopic mucosal resection (EMR), remnant lesions after EMR, indication for EMR, early gastric cancer, poorly differentiated adenocarcinoma
別刷請求先
大東雄一郎 〒634-8522 橿原市四条町840 奈良県立医科大学消化器・総合外科
受理年月日
2004年1月28日
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