症例報告
腸間膜動脈の外膜肥厚を伴った小腸カルチノイドの1例
中村 健一, 金澤 旭宣, 尾崎 信弘, 長岡 三郎*
島根県立中央病院外科, 同 病理診断部*
52歳の男性で,2度にわたり肝腫瘤を指摘されていたが放置していた.2002年1月より腹痛,腰痛,下痢を生じ同3月当院受診した.右側腹部中心に圧痛を伴う境界不明瞭な腫瘤を触知した.CTで肝の多発性腫瘤,回腸の広範囲にわたる壁肥厚,腸間膜リンパ節腫大を認めいずれもhypervascularであった.小腸透視で回腸に50 cmにわたる腸管伸展不良,壁不整,円形透亮像を認めた.下部消化管内視鏡で回腸末端の扁平隆起性病変を生検しカルチノイドと診断された.血中5-HIAA,セロトニン高値を認めた.経口摂取で腹痛,下痢増悪するため手術を施行.虚血性硬化と思われた腸管を約50 cmにわたり切除した.標本内には多数の黄色扁平隆起性病変が存在し病理診断でカルチノイド腫瘍,多発性肝転移と診断された.血流障害を認めた領域の腸間膜動脈には特異的な外膜の弾性線維肥厚(elastic vascular sclerosis)を認めた.
索引用語
carcinoid tumor, small intestine, elastic vascular sclerosis
別刷請求先
中村 健一 〒693-8555 出雲市姫原町4-1-1 島根県立中央病院外科
受理年月日
2004年1月28日
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