原著
食道癌術後早期経腸栄養における投与量増加の影響について
愛甲 聡, 吉住 豊, 松山 智一, 石塚 隆充, 津和野 伸一, 島内 正起, 杉浦 芳章, 前原 正明
防衛医科大学校第2外科
目的:食道癌術後の標準的管理法としている早期経腸栄養(EN)において,投与量増加の影響について検討した.対象と方法:99年までの術後静脈栄養(PN)とENのrandomized controlled trial登録例のうち,術前無治療の症例をおのおのPN群(9例),EN-1群(11例)とした.EN-1群では1PODにENを500 ml/日で開始し漸増して5POD以降1,500 mlとした.その後の症例(EN-2群:11例)では術直後より開始して3POD以降1,500 mlとし,血漿輸血を極力控えた.3群間で水分出納,生化学検査値,合併症の頻度を比較した.結果:EN-2群では投与熱量が4PODまで多く,血糖値は4PODで有意に高かったが許容範囲内であった.水分出納は,2PODでEN-2群のみ正の値を示し他群と有意な差があった.FFPの周術期平均投与量は,EN-2群では2Uで他群に比べ有意に少なく,術後早期の生化学的栄養指標値はEN-2群で低値を示した.total bilirubin値は,PN群に比べ,EN-1群は5POD以降,EN-2群は2PODより有意に低値を示した.合併症発生率に差はなかったが,排便回数の多い症例がEN-2群にみられた.考察:早期ENの増量は水分動態を安定化し,血漿輸血を用いない術後管理に有用である可能性があった.高ビリルビン血症抑制効果はENの投与量増加でより強調された.早期大量ENは,安全に施行可能だが,厳重な観察下の投与と年齢や体表面積による補正も必要と考えた.
索引用語
early enteral nutrition, esophageal cancer, hemodynamics, hyperbilirubinemia, postoperative complication
日消外会誌 37: 1363-1371, 2004
別刷請求先
愛甲 聡 〒359-8513 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第2外科
受理年月日
2004年2月25日
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