症例報告
リンパ節転移を伴ったインスリノーマの1例
村瀬 勝俊, 島本 強, 近藤 哲矢, 杉本 琢哉, 尾関 豊
国立東静病院外科
症例は57歳の男性で,1998年頃から冷汗,倦怠感を認めていた.2002年11月当院を受診し低血糖を指摘された.空腹時血糖値は35 mg/dlで,血中インスリン値(IRI)は19.8 μU/ml,C-peptideは4.9 ng/mlと軽度上昇していた.腹部CTでは膵尾部に15 mm大の乏血性腫瘤を認め,また脾門部リンパ節の腫大を認めた.選択的動脈内カルシウム負荷テストでは脾動脈が陽性であった.膵尾部インスリノーマの診断で膵部分切除術を施行した.手術時に脾門部リンパ節転移が判明し,周囲リンパ節の郭清と脾摘術を追加した.術中迅速IRI測定で原発巣切除後にIRIは正常化したが,リンパ節郭清の前後では変動はなかった.病理組織学的に腫瘍は膵内分泌腫瘍でインスリンに陽性であった.術後IRIは正常化し低血糖症状も改善した.術後10か月の現在,再発徴候は認めていない.
索引用語
insulinoma, lymph node metastasis, intraoperative IRI monitoring
日消外会誌 37: 1423-1427, 2004
別刷請求先
村瀬 勝俊 〒411-8611 静岡県駿東郡清水町長沢762-1 国立東静病院外科
受理年月日
2004年2月25日
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