症例報告
吐血で発症した膵嚢胞腺腫内出血の1例
笹屋 高大, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 鈴木 正彦, 鷲津 潤爾, 坂田 慶太*
大垣市民病院外科, 同 臨床病理科*
症例は73歳の女性で,既往歴として膝関節炎のため10年前からアスピリンを1日1錠内服していた.心窩部痛が出現し,コーヒー残渣様の吐血をきたしたため精査目的で当院を受診した.腹部CTでは膵尾側に68×74 mm大の嚢胞性腫瘤を認め,その内部に高吸収域が存在し,さらに中心部に低吸収域を認めた.CT値はそれぞれ17 HU,75 HU,45 HUであった.ERCP検査では,拡張した分枝膵管から嚢胞内へ造影剤が貯留した.腹部MRIで膵嚢胞内出血と診断したが腫瘍マーカーの上昇もあり膵癌も否定できないため,膵体尾部脾合併切除術を施行した.摘出標本では膵尾部腹側面に9×7 cm大の弾性軟な嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞内腔に血腫が存在したが,腫瘍性病変を認めなかった.組織学的に嚢胞壁は一層の円柱上皮に覆われており,膵嚢胞腺腫と診断した.術後経過は順調で術後第22病日に退院した.
索引用語
cystadenoma of the pancreas, internal hemorrhage in cyst, digestive bleeding
日消外会誌 37: 1560-1564, 2004
別刷請求先
笹屋 高大 〒464-8512 名古屋市千種区千代田橋1-1-1 国家公務員共済組合連合会東海病院外科
受理年月日
2004年3月24日
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