症例報告
A型胃炎,高ガストリン血症を伴う多発性胃カルチノイドの1例
木内 誠, 椎葉 健一, 石井 誠一, 溝井 賢幸, 小山 淳, 松野 正紀*, 佐々木 巌
東北大学大学院医学系研究科生体調節外科学分野, 同 消化器外科学分野*
症例は38歳の男性で,健康診断精査時の上部消化管内視鏡検査にて胃内に多発する小ポリープを指摘された.生検の結果,胃カルチノイドと診断され当科紹介となった.血液検査では血清ガストリン値が800 pg/mlと高値であり,内視鏡的胃酸分泌試験で無酸を呈していた.超音波内視鏡で最大のポリープは深達度sm1と診断され,リンパ節転移の可能性もあると判断し胃全摘術およびD1リンパ節郭清を施行した.病理組織所見では最大のポリープを含めた3個のポリープがカルチノイドで,他は過形成ポリープと診断された.最大のカルチノイドは深達度smで静脈侵襲陽性(v1)であったが,他のカルチノイドはmに限局し脈管侵襲陰性でリンパ節転移は認めなかった.術後は合併症なく経過,血中ガストリン値も正常化し第27病日に退院した.A型胃炎に続発し高ガストリン血症を伴う多発性胃カルチノイドの1例を呈示し,その病態と治療方針について文献的考察を加えて報告する.
索引用語
gastric carcinoid, hyper gastrinemia, type A gastritis
日消外会誌 37: 1616-1621, 2004
別刷請求先
木内 誠 〒961-0907 白河市字横町114 白河厚生総合病院外科
受理年月日
2004年4月28日
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