症例報告
空腸瘻を形成した膵浸潤胃癌に対する左上腹部内臓全摘術の1例
相馬 智, 石本 喜和男, 大柳 治正*
良秀会藤井病院外科, 近畿大学外科*
症例は55歳の男性で,心窩部痛と体重減少を主訴に受診した.胃透視および内視鏡検査では胃体上部から幽門部までを占めるBorrmann 3型胃癌で,胃体下部大彎から空腸へ直接通じる瘻孔を認めた.開腹すると,癌は横行結腸間膜,空腸,膵へ直接浸潤を示したが,肝転移と癌性腹膜炎は認めなかったので,空腸を含めてen-blocに左上腹部内臓全摘術を施行した.術後の病理診断は低分化腺癌で,胃空腸瘻管壁は腫瘍細胞で占められるも,リンパ節はNo.3,No.4の1群のみ陽性のn1症例であった.術後経過は順調で第40病日に退院した.現在18か月が経過して体重は8 kg増加し,再発なく健在である.胃癌による空腸瘻の報告はきわめてまれで,本例は内外を通じて5例目である.治療は,隣接浸潤臓器の合併切除を含めた拡大手術が唯一の選択である.
索引用語
gastric cancer, gastro-jejunal fistula, extended operation
日消外会誌 37: 1639-1644, 2004
別刷請求先
石本喜和男 〒596-0044 岸和田市西之内町3-1 良秀会藤井病院
受理年月日
2004年4月28日
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