症例報告
腸重積で発症した下行結腸癌の1例
狩俣 弘幸, 池松 禎人, 藤谷 健二, 猪熊 孝実, 松尾 圭, 黒田 宏昭, 山本 孝夫, 西脇 由朗, 木田 栄郎, 脇 慎治
県西部浜松医療センター外科
成人に発生する腸重積はまれであり,その多くは器質的疾患を合併している.なかでも下行結腸は後腹膜に固定されており腸重積は発生しにくいとされる.今回我々は腸重積で発症したまれな下行結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で突然の腹痛と下痢で発症し2日後には嘔吐も出現,当院を受診した.左下腹部に有痛性手拳大腫瘤を触知し,腹部単純撮影にて左側結腸に鏡面像を認め大腸イレウスの診断で入院した.CTで左側結腸に特異的な多重層構造を認め腸重積の診断で緊急手術を施行した.開腹すると下行結腸のほぼ中程で腸重積を認め,年齢より悪性腫瘍の可能性を考慮してD2郭清を含めた下行結腸切除を行った.切除標本割面で重積先進部に3 cm大の扁平隆起性病変を認め,組織学的に深達度mpの高分化型腺癌であった.本例は先天的に結腸脾間膜が欠損し,腸間膜が後腹膜に固定されていなかったために,下行結腸癌が先進部となり腸重積が合併したものと考えられた.
索引用語
descending colon cancer, intussusception
日消外会誌 37: 1664-1667, 2004
別刷請求先
池松 禎人 〒432-8580 浜松市富塚町328 県西部浜松医療センター外科
受理年月日
2004年4月28日
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