症例報告
魚骨による不顕性穿孔が原因と考えられた大網膿瘍の1例
山本 一仁, 木内 博之, 小川 芳雄, 山村 進, 高橋 由至, 杉浦 篤, 沖野 哲也1), 吉田 寛2), 田尻 孝2)
北村山公立病院外科, 同 消化器科1), 日本医科大学第1外科2)
症例は79歳の男性で,急激な腹痛が出現し来院した.来院時,下腹部に著明な腹膜刺激症状を認め,腹膜炎の診断にて緊急入院となった.入院時検査にてCRPが5.0 mg/dlと上昇し,腹部超音波・CTにて臍直下にわずかに造影効果を有する直径3.5 cmの腫瘤を認めた.腫瘤の確定診断はつかなかったが,汎発性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した.術中所見は下腹部に黄白色の膿汁を少量認め,大網に3×3.5 cm大の膿瘍を認めた.消化管全体に穿孔部は認めなかったため,膿瘍の切除を施行し,腹腔内洗浄後手術を終了した.術中腹水からStreptococcus intermediumが検出,病理所見より魚骨が原因となった膿瘍であることが示唆された.術後の経過は良好であった.大網膿瘍はまれな疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語
peritonitis, omental abscess, fish bone
日消外会誌 37: 1761-1765, 2004
別刷請求先
山本 一仁 〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
2004年4月28日
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