症例報告
虫垂杯細胞カルチノイドの1例
多久和 輝尚, 高橋 忠照, 岡田 和郎, 沖元 達也, 梶谷 桂子, 鬼武 美幸, 中山 宏文*
広島鉄道病院外科, 広島大学医学部病理学第1講座*
症例は56歳の男性で,主訴は右下腹部痛,嘔吐.精査したところイレウス管からの造影で回腸末端に閉塞部位を認め,小腸腫瘍による腸閉塞の診断で,イレウス解除術を施行した.術中,虫垂が腫大し回腸に癒着,内腔を閉塞しており,虫垂癌の診断で回盲部切除術を施行した.組織学的には低分化腺癌を合併した虫垂杯細胞カルチノイドの診断であった.術後の補助化学療法は行わず術後半年が経過している.杯細胞性カルチノイドはカルチノイド腫瘍の一亜型とされているが,悪性度が高く予後不良であり腺癌の一種とも考えられている.我々の集計では杯細胞カルチノイドの本邦報告は71例と少なく,治療法,予後に対する一定の見解は定まっていない.さらに,本症例のように腺癌を合併した例は少なく,今後,腫瘍の発生機序,治療法を確立していく上で興味深いと考え,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語
goblet cell carcinoid, poorly differentiated adenocarcinoma, appendix
日消外会誌 37: 1771-1776, 2004
別刷請求先
多久和輝尚 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学部付属病院呼吸器外科
受理年月日
2004年4月28日
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