症例報告
膵臓癌術前に無症候性の肺塞栓症と診断され安全に手術を施行しえた1例
畑 泰司, 池田 正孝, 山本 浩文, 池永 雅一*, 大植 雅之, 永野 浩昭, 関本 貢嗣, 中森 正二, 左近 賢人**, 門田 守人
大阪大学大学院病態制御外科, 国立病院大阪医療センター外科*,
西宮市立中央病院外科**
症例は68歳の男性で,膵臓癌手術6日前に肺血流シンチ(SPECT)とCTを施行したところ,無症候性の下肢深部静脈血栓症・肺塞栓症と診断した.ヘパリン12,000単位/日を開始し,手術2日前のCTで増悪傾向は見られなかった.術式は膵頭十二指腸切除術で,術中はヘパリンを中断し弾性ストッキングと健足にフットポンプを使用して厳重な観察を行った.術後1日目の下肢超音波検査では左大腿静脈にのみ壁在血栓を認めた.術後出血のないことを確認し,ヘパリンを再開.術後経過で肺塞栓症や深部静脈血栓症の増悪を疑う所見を認めず,抗凝固療法による出血も認めなかった.術後8日目の肺血流シンチで肺塞栓症は軽快していた.術後肺塞栓症の中には,術前からの無症候性肺塞栓症の術後増悪例も含まれていると考えられ,特に悪性腫瘍患者においての周術期の診断と予防の重要性が示唆された.
索引用語
deep venous thrombosis, pulmonary embolism, malignant tumor
日消外会誌 37: 1877-1882, 2004
別刷請求先
畑 泰司 〒565-0871 吹田市山田丘2-2-E2 大阪大学病態制御外科
受理年月日
2004年5月25日
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