症例報告
嵌頓鼠径ヘルニア整復後に発症した虚血性小腸狭窄の1例
遠野 千尋, 川村 秀司
岩手県立江刺病院外科
今回われわれは嵌頓鼠径ヘルニアの整復後に小腸狭窄をきたした症例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で,2003年10月1日,鼠径ヘルニア嵌頓から腸閉塞をきたし,当院を受診した.嵌頓鼠径ヘルニアによる腸閉塞の診断で入院し,嵌頓を整復した.その後腸閉塞は改善し10月8日(整復から7日後)にヘルニア根治術を施行し,退院した.しかし11月4日(術後27日)に腸閉塞を再発し入院した.諸検査にて小腸の狭窄を認めた.保存的に加療したが狭窄の改善はなく,11月18日(術後41日)開腹手術を施行した.中部小腸に2か所の狭窄部を認め13 cmの小腸部分切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では虚血性小腸炎と診断された.嵌頓鼠径ヘルニアの症例に対して,整復後にも虚血性小腸炎からの小腸狭窄が遅発性にありえることから,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
索引用語
incarcerated inguinal hernia, ischemic enteritis, enterostenosis
日消外会誌 37: 1900-1904, 2004
別刷請求先
遠野 千尋 〒023-1103 江刺市西大通り5-23 岩手県立江刺病院外科
受理年月日
2004年5月25日
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