症例報告
子宮内避妊器具の長期装着から腹部放線菌症を発症しS状結腸瘻,膀胱瘻,腹壁膿瘍をきたした1例
岡田 禎人, 鈴木 勝一, 中山 隆, 渡辺 治
常滑市民病院外科
症例は54歳の女性で,下腹部痛を主訴に来院した.下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた.また尿中にも便が混じっていた.腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた.注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた.また膀胱鏡では膀胱内に便汁を認めた.患者は20年以上子宮内避妊具(intrauterine contraceptive device;以下,IUD)を装着していた.IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため,IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし,これがS状結腸,膀胱,腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した.絶食,抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため,手術により瘻孔の切除と膿瘍のドレナージを行った.術後経過は良好で,腹壁の膿瘍は消失した.術後7か月の現在再発を認めていない.
索引用語
actinomycosis, intrauterine contraceptive device, sigmoid colon fistula
日消外会誌 37: 1930-1933, 2004
別刷請求先
岡田 禎人 〒479-8510 常滑市鯉江本町4-5 常滑市民病院
受理年月日
2004年6月30日
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