症例報告
慢性に経過した憩室炎によるS状結腸閉塞の1例
本橋 英明, 小畑 満, 森本 慎吾, 加藤 俊介, 桑山 隆志, 岡本 直子, 石田 孝雄, 杉原 健一*
中野総合病院外科, 東京医科歯科大学大学院大腸肛門外科*
症例は86歳の女性で,腹痛を主訴に外来受診し,腹部単純X線検査にて腸閉塞と診断され入院となった.ガストログラフィン注腸検査ではS状結腸に高度の狭窄が見られ,腹部造影CTで同部位に浮腫性変化による壁肥厚と憩室を認めたため,憩室炎による腸閉塞と診断した.大腸内視鏡は,腸の屈曲が強く病変部まで挿入できなかった.開腹するとS状結腸周囲は炎症が激しく,強固に癒着していたが剥離可能であった.口側の大腸は著しく拡張していたため大腸亜全摘を施行した.切除標本の肉眼所見ではS状結腸は約6 cmの壁肥厚を伴う狭窄が見られた.病理組織学的所見では異型性のない大腸粘膜と,筋層の肥厚,著しい炎症細胞浸潤が認められ,憩室による筋層の肥厚に,浮腫性の変化が加わって狭窄がおきたと考えた.悪性所見は認めなかった.大腸憩室症の合併症は多彩であるが,腸閉塞となり,手術を要した症例の報告は少ないことから,文献的考察を加えて報告する.
索引用語
diverticulitis, bowel obstruction
日消外会誌 37: 1939-1943, 2004
別刷請求先
本橋 英明 〒164-0011 中野区中央4-59-16 中野総合病院外科
受理年月日
2004年6月30日
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